厚生労働省の2020年度公的年金財政収支報告から日本の未来を考える

厚生労働省の公的年金財政収支報告を見ると、年金の財政は若い世代の人たちが納める保険料が中心の収入と、高齢者に支給される年金額が中心の支出で計算されています。年度毎の収支は、1998年までは毎年黒字で、運用収入もあって積立金が約180兆円たまっていました。
 その後少子高齢化の影響で毎年赤字が続いています。特に2005年から2012年まで7兆円近くの赤字が続きました。それでも積立金は運用利益があって、2012年度松でも180兆円近く残っていました。
  しかし、国は赤字を理由に支給額を減らす法律を次々と作っていったのです。
  
  その1)支給開始年齢を65歳に引き上げていく法律。まだ定年は65歳ではないのに。
  その2)マクロ経済スライド。物価や賃金が上がっても年金の支給額を上げない法律。国際的にも批判されています。
  その3)特例解消法。マクロスライドを導入するために実施。3年間で年金を2.5%カット。
  その4)年金改革法。平均賃金の変動率がマイナスの時、それに合わせて年金支給額を下げる。
  
これらにより、財政赤字は減少し、黒字になった年もありました。その結果、2020年度末の積立金は230兆円以上となります。厚生年金法と国民年金法には、『積立金の運用は、将来の保険給付の貴重な財源となるものであことに特に留意し、・・・・、年金保険事業の運営の安定に資することを目的として行うものとする。』とあります。

 つまり、支給開始年齢が65歳になっている現在、マクロスライドも年金改革法もいりません。また昨今の物価上昇率に合わせて支給すべきでしょう。若い世代の人に将来の心配をさせてはいけません。
 
 いま、日本年金機構の「年金額改定通知書」が年金受給者のもとに届いています。その内容は、「令和4年度の年金額は昨年度から0.4%の減額改定となります」というものです。なぜ物価が上がっているのに年金が減額されるのか。本来は、物価上昇なら年金支給額も上がらないと生活が成り立ちません。これは、2016年の法改正によって、年金支給額は直近の物価高だけでなく、現役世代の賃金下落にも連動させる仕組みになったためです。つまり、現役世代の18~20年度の「実質賃金変動率」がマイナス0.4%になり、それに対して21年の「物価変動率」はマイナス0.2%だったため、より低い方の「賃金」に合わせて年金支給額がマイナス改定になったためです。これは、昨年度から適用され、これで2年連続で減額となりました。
 
 年金財源がないと言っていますが、財源はあります。年金積み立ては本来、年金支給のためのものであり、今そして未来の年金受給者のものです。政治家のものではありません。折しも、軍事費を2倍以上にすべきだと政権を投げ出した人物が声を上げ、それに呼応する政治家やマスコミもいます。しかし、そのためには75歳以上の医療費を2倍して社会保障費を削ったり、国債を発行したり、さらなる消費増税などをするしかないでしょう。アメリカの言いなりになり、専守防衛を投げ捨てて敵基地攻撃を言い出し、さらに状況を悪化させ、核兵器禁止条約の批准を拒否し、多国間の対話による平和への外交努力も不十分なまま、ただひたすらに軍備を増強し、一般市民の生活がどんどんと痛めつけられていく日本。こんな日本に誰がした?